邦画

映画好きの全ての青春を過ごした大人たちへ!邦画『惡の華』解説<後編>

たかひ館長
たかひ館長
皆さんこんちゃです!

年間300本以上の映画を見ている時短映画館のたかひ館長です!

前回に引き続きまして『惡の華』を解説していきたいとおもいます。

前回のブログをまだご覧になっていない方は併せてお楽しみください!

映画好きの全ての青春を過ごした大人たちへ!邦画『惡の華』解説<前編> 年間300本以上の映画を観ているたかひ館長の映画ブログ「時短映画館」へようこそ! さて今回皆様にご紹介するのは2019年公...
たかひ館長
たかひ館長
それでは張り切っていきましょう(‘ω’)ノ



中学編 後編

・再契約

©押見修造/講談社 ©2019映画『惡の華』製作委員会

春日高男は、佐伯奈々子と仲村佐和の両方から拒絶されて生きている心地もないままに日常を過ごしていた。

佐伯も春日が教室をめちゃくちゃにしたあの日以来、仲村との関係性もあって話すことはなかった。

春日の頭の中にあったのは、あの日山の向こう側に行けなかった自分の不甲斐なさと仲村の涙を浮かべた姿だけだった

しばらくして、春日は仲村の実家を尋ねた。

家の周辺をウロウロとしていると仲村の父親に声をかけられて家に上がることになった。

仲村の父親も佐和には手を焼いているらしく、年頃の娘の考えが何一つ分からないという。

春日は相槌を打ちながら話をただ聞くしかなかった。

そしてふとした拍子に、仲村佐和の自室に入っていく。

そこで見つけたノートにはこんなことが描かれていた。

・くだらない
・クズ
・私は変態だ。

そこには仲村なりの心の叫びが記してあった。

そしてページを進めていくと春日のことについて触れるようになった。

・私以外にも変態がいた!春日高男
・春日君と教室をクソムシの海にしてやったよ
・やっぱり私がみとめただけある!

そこには春日との歪んでいるが確かな思い出が記されていた。

そして記入の途切れたページの後に小さな文字でこう書かれていた。

「向こう側へ行けなかった。行けなかった。」

それは仲村の落胆と絶望の様子が手に取るように分かった。

春日はふと後ろを見るとそこに仲村が立っていて、罵声を浴びせ飛び出していった仲村を追いかけた。

春日は仲村を退屈させない世界を作ると誓い、新たな契約を結ぶのだった。

・この街の向こう側

仲村と再度契約を交わした春日は、自身の黒い感情と向き合って仲村の求める世界を作り上げていくことに執心した。

女子生徒の下着を盗んで、この街の向こう側と称した川辺の小屋に飾った。

小屋の中は薄暗く、2人しか理解することのできない空間が出来上がっていた。

いつしか春日と仲村はこの小屋の中で多くの時間を過ごすようになっていった。
それは恋愛感情や友情という言葉では表現のできない絆が生まれているようにも見えた。

そんなある日、いつものように春日が小屋を訪れるとそこには佐伯の姿があった。

佐伯は自分には見向きもせず、仲村に執心する春日が許せなかった。

だから春日を奪うために小屋の中で春日と「あれ」をするために来たのだ。

佐伯曰く、あれをすることこそが大人である証拠なのだと言うのです。

ここの感情表現は本当に素晴らしい演技でした。

始めは抵抗できない春日だったが、仲村への思いを告げて佐伯を残して小屋を後にした。

春日が小屋を離れてすぐに、小屋が燃えていることに気が付いた。

野次馬の集まる中、仲村も現れ佐伯は

「春日君としたよ?春日君を取られてどんな気持ち?」

と仲村に詰め寄るが、仲村は動じることもなく佐伯を抱きしめ罵倒するのだった。

・全てのクソムシに告ぐ

夏祭りの日。

仲村と春日は人生を終わらせるべく会場に向かっていた。

その手に持っているのは包丁と油の入ったポリタンク。

盆踊りの社に登って占拠した2人は、油を被って大声で叫んだ。

クソムシ

「この町の全てのクソムシども」
「さようなら さようなら 全てのクソムシども」
「死ね 死ね 死ね」
「この町は地獄だ ここで生きるのは地獄だ」
「誰も聞かない 遠くの山の向こうで響く あの華の咲く音を誰も聞かない」
「そして私もクソムシだ クソムシの泥の中で ほかのヤツらと違う方を向いているだけの」
「私こそクソムシだ」
「向こう側は ない」
「偽物の変態」
「向こう側は ない!」
「永遠にずっとずっと」
「クソムシが…クソムシが…クソムシ…」

そうして最後の時。

祭りに集まった全ての人の前でライターの火を灯そうとしたとき、仲村は春日を突き落とした。

何故かはわからない。

仲村は独り最後の時を迎えようとするが父親が間一髪で止めに入り事態は終息した。

思いを遂げることがないままに。

高校編

©押見修造/講談社 ©2019映画『惡の華』製作委員会

例の事件の後、春日・佐伯・仲村はそれぞれ元居た街を離れて関わることはなかった。

春日は高校では存在を消したかのように自身を殺していた。

本を読むことをやめて、ただ空虚な時間を過ごしていた。

そんな中で古本屋の前を通りかかったときに学校の人気者である常盤文を見かける。

常盤の手には「惡の華」があり、春日は思わず声をかけてしまう。

常盤とは面識などなく、どことなく仲村に雰囲気は似ているものの明るく陽気な常盤とは喋ることすらないというのに。

しかし意外なことに、常盤は本好きで春日は自宅に招かれ多くのコレクションを見せてもらった。

その中に常盤が自身で書いていると思われる小説のプロットを見つける。

そのプロットを読んだ春日は、この中に自分がいると感じ小説を書く手伝いをすると誓った。

その日の帰り道、常盤と歩いていた春日は偶然にも彼氏を連れた佐伯と再会する。

佐伯は以前のような純白の雰囲気とは変わって魔性のような微笑みを見せた。

そして無理やり連絡先を交換すると耳元で

「またその子も不幸にするの?」と囁かれる。

後日、常盤は佐伯のことが気になるも春日に上手く聞けず、春日も上手く話せずともいつか全てを話すと誓う。

春日は休日に佐伯に誘われ食事に行くが、佐伯は春日の普通っぷりにがっかりしたという。
他人を不幸にして当たり前に生き、佐伯からも仲村からも、はたまた常盤からも逃げている春日に佐伯は悪態だけをついて帰っていった。

その日の夜、春日の携帯には佐伯から仲村の現在の居場所が送られていた。

春日は佐伯の言葉を深く噛み締めて、自身のこれまでやってきた凶行を文章にして常盤に全てを話した。

常盤は受け止めきれない様子だったが、これからの春日と過ごしたい思いから強気を保った。

そして仲村に会いに行くといった春日についていくと言い、2人は仲村の住む海沿いの街に向かった。

仲村は例の事件のあと父親の元を離れて母親の営む食堂に暮らしていた。

久しぶりに再開した春日と仲村。

そこに初めて仲村と相対した常盤。

3人は冬の海辺で思いをぶつけ合い、冷たい海の中でお互いを沈め合い、しがらみの全てとともに洗い流していく。

惡の華は散り、そこには1輪の愛の華だけが残っていた。

春日は帰り道、常盤に改めて思いを告げ、2人は寄り添いながら元の街へと戻っていった。

そして海岸に座っていたこの町の女子高生の眼差しの先には、春日が見たあの「惡の華」が今まさに咲きほころうとしていた。

館長のあとがき

いかがだったでしょうか?

「惡の華」の後編は、春日・仲村・佐伯の思春期のもがき合いが痛いほど表現されています。

成長期というものは本当に厄介なもので、自身の思いと反したことでもとんでもないエネルギーで遂行できてしまったりするものです。

春日や仲村の起こした事件も他人事じゃなく、誰しも心の中では思い描いたことだと思います。

それを行動に移してしまったことが悪かったかと言われれば、館長は何とも言えません。

高校編では飯豊まりえさん演じる常盤文が登場し、春日の凍った心をゆっくりと溶かしていきます。

映画本編では中学編に少しずつ高校編を挟んで心の変化を見事に描いています。

時短映画館ではここはあえて分けて書きましたので、ぜひ映画本編でその情景を楽しんでください。

今作は出演している若手俳優さんたちの演技がとても光っています。

分かりやすい青春群青劇では決してありません。

でも見る人すべてに心のどこかにチクッと刺してくる鋭利な思いはスーッと胸を楽にしてくれるはずです。

映画好きの皆様。

ぜひゆっくりと楽しんでください。

それでは今回はここまで!

ちなみに惡の華は下記のサービスで視聴することが出来ます!

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それじゃ!また!

たかひ館長
たかひ館長
それじゃ!また!