邦画

映画好きの全ての青春を過ごした大人たちへ!邦画『惡の華』解説<前編>

たかひ館長
たかひ館長
皆さんこんちゃ!時短映画館のたかひ館長です!

年間300本以上の映画を観ているたかひ館長の映画ブログ「時短映画館」へようこそ!

さて今回皆様にご紹介するのは2019年公開の邦画『惡の華』です!

・惡の華ってまず何?

・原作は読んだけど実写化には抵抗が…

・どこで見れるの?

こんな方に分かりやすく内容をご紹介していきます!

前編後編に分かれていますので是非どちらもお楽しみください。

それではまず原作の情報を確認していきましょう!

原作情報

原作者 押見修造
連載雑誌 別冊少年マガジン
巻数 全11巻
アニメ化 2013年
実写化 2019年
配信VOD Netflix

読み切りから昇格した作品で、内容は刺激が強く過激で賛否両論ありましたが、その内容の繊細さには館長非常に影響を受けた漫画でございました。

「この漫画がスゴイ!2011」ではオトコ編の10位を獲得した人気実力ともに兼ね備えた作品と言えましょう!

アニメ化は2013年にされていて、全編ロトスコープ撮影(モデルの動きを撮影しアニメに重ねていく)での製作で驚きを隠せませんでした!
ロトスコープを用いたアニメだと他に「こわぼん」などが有名ですね!

さてそれでは実際の映画の内容を少しずつ紐解いていきましょう!

※ここからネタバレ注意でございます!

登場人物

春日高男(カスガタカオ)演:伊藤健太郎

中流家庭で育った田舎町の中学生。
読書好きの父親の影響で読書に夢中である。
作品の中ではボードレールの『惡の華』を敬愛しており、自身のすべてが詰まっていると考えている。
同じクラスのマドンナである佐伯奈々子に恋心を抱いている。
自分は少し周りとは違う考えを持った人間だと思い込んでいる。
仲村佐和は唯一の自分の理解者だと考えている。

演じた伊藤健太郎さんは最近注目の若手俳優ですね!
「今日から俺は‼」などのコメディのイメージも強い方ですが、今作では思春期を悩む学生を見事に演じています!
今後ますます注目できますね!

仲村佐和(ナカムラサワ)演:玉城ティナ

本作のヒロインであり、もう1人の主人公といっても過言ではない存在。
古びた家に父親と祖母との3人暮らしである。
性格は非常に攻撃的で鬱屈しているところがあり、教師や周囲に対して酷い嫌悪感を持っている。
春日の内面の黒い感情に気づき、自身と同じ信念を持っているものとして弱みに付け込んで「契約」という形で距離を縮めていく。
街の「向こう側」を探し続けている。

モデルで女優で様々な分野で活躍されている玉城ティナさんは今作で確実に一皮剥けた感じがしますね!
「Diner」での可愛い雰囲気とは打って変わり、仲村佐和という難しい感情を持った役を見事に演じ切っていました。
キャラクターの再現度も非常に高いのではないでしょうか!

佐伯奈々子(サエキナナコ)演:秋田汐梨

本作のもう1人のヒロインで、仲村とは正反対の明るく美少女でクラスのマドンナ的存在である。
成績優秀で容姿端麗といった文句のつけどころのない生徒である。
春日に密かに思いを寄せており、とあるきっかけから2人は付き合うことになる。
しかし、春日と仲村の奇妙な関係性を羨んでいるうちに壊れていく。
春日と仲村の負の感情に相乗するように黒い感情を表に出していく。

若手注目度の高い秋田汐梨さんは今作で体当たりな演技をしっかりと全うしていましたね!
若干16歳にしてこの演技とは、今後の成長が非常に楽しみです!
笑顔の表情と狂気の表情をどちらも今作では楽しめます!

常磐文(トキワアヤ)演:飯豊まりえ

物語の後半である、高校編のヒロイン。
どことなく仲村に容姿の雰囲気が似ているが、クラスの人気者で男子からの人気も高い。
色々と男性関係の噂も絶えないも、実際のところは自身を隠して生きている。
春日とは小説『惡の華』をきっかけで知り合い、仲を深めていく。
自身でも小説を構想していて、プロットを書いている。

飯豊まりえさんは作品を重ねるにつれて演技に深みが増していますね。
今作では後半のヒロインとして登場しますが存在感は抜群です!
原作とは少し違った設定のキャラクターですが実写化として別の良さを見事に引き出していました!

時短解説 <出会いから壊れるまで>

主人公の春日高男はどこにでもいる田舎の中学生。
春日はそんな毎日に飽き飽きしながらも、この街でずっと生きていくような感覚を持っていた。

そんなある日、春日は思いを寄せるクラスのマドンナである、佐伯奈々子の体操服を盗んでしまう形で家に持って帰ってしまう。
体操服を何とかして返さないと思う春日なのですが、言い出せずにまた持ち帰ってしまった。

その帰り道にクラスの問題児ある仲村佐和に捕まり、体操服を盗んだことを知っていると言われバラさない代わりに「契約」をしようと持ち掛けられる。
春日はその要求を呑むしかできず、仲村との主従関係が始まるのだった。

そして様々な仲村からの試練を受け止めていく中で、春日は自身の闇の部分と向き合い、同時に佐伯さんの清らかさに心を痛めていく。

こんな変態な自分が、どす黒い感情を持った自分が佐伯さんに釣り合うはずがない。
春日は意を決して仲村に自身の悪行の全てと内部に秘める変態性を伝えてくれと頼むのだった。

仲村はその願いを聞き入れるが、その方法は残酷極まりない方法で春日に提案していく。

その日の晩に春日と仲村は自身の通う学び舎に忍び込み、「黒いぐちゃぐちゃした感情」をぶちまけて教室を「クソムシの沼」に変えていく。

春日は自身の犯した罪を全て黒板に書き記し、自白の為に自身の名前も書き記した。

仲村は墨汁を塗りたくり、机をなぎ倒し、教室の中はカオスで満ち溢れていった。

汚い言葉を書きなぐった教室は2人にとって、居心地のいい空間になり春日が盗み出した佐伯の体操服も墨汁まみれになっていた。

教室で朝まで過ごした春日と仲村は自分たちのやったことが世間に知れ渡ることを楽しみに家路につくのだった。

春日は教室に着くと自身と仲村で汚した教室に生徒が集まり阿鼻叫喚していた。

ふと黒板をみると、自白で書いたはずの文章から自分の名前が消されていることに気づく。
仲村の顔を見ると不敵に笑っていた。
自身の呪縛から解き放たれる思いでいた春日はその様子に困惑し、教室から去った。

家には仕事であるはずの父が家にいて、墨汁まみれの服を持って問いただされた。

春日は家から飛び出して河原に行くと仲村が待っていて、あの山の向こう側へ行くという。
雨降りしきる中自転車を漕ぎ山の途中の遊園地まできたが疲れ果て雨宿りをしていた。

そこへ佐伯がやってきた。

佐伯はどうにか春日の「変態」を受け入れ理解しようとしたのだが、春日の心の中には仲村の姿しかないことに気づいた。

仲村は煮え切らない春日と春日のすべてを受け入れようとする佐伯に苛立ちと悲しさを抱え心がかき乱された。

そうして佐伯と仲村は立ち去り、春日はどこにも行けず誰も救えないままに絶望を抱えるしかなかったのだった。

館長の感想

たかひ館長
たかひ館長
青春って思い返すほど悔やんでます

読書が趣味で、いつも難しい本ばかりを読んでいるという部分はどこか共感する方も多いのではないのでしょうか?

内容が分かっているわけではないけれども、なんか難しい本を読んでいる自分が他とは違うのじゃないのかという成長期特有の思考回路で物事を考えています。

この作品の登場人物はそれぞれが自身と照らし合わすことのできる等身大のキャラクターが多く、全ての青春時代を生きた大人たちには深く突き刺さる人物が多いと思います!

今回の映画で原作をどうやってうまくまとめていくのだろうと考えていたのですが、非常にテンポよく展開が練られていたなと感じました。

映画の中で行われた契約による指令は以下の3つでした。

・第一の試練:自身の「変態さ」を作文に書いてこい

・第二の試練:佐伯さんとのデート中に服の下に体操服を着て
佐伯さんとキスすること

・第三の試練:佐伯さんと「アレ」してこい

第一の試練では、春日は自身の変態な部分はボードレールの『惡の華』に詰まっていると仲村に伝えるのですが、一蹴されたのちに身ぐるみを剥がされて、佐伯奈々子の体操服を着させられてしまいます。

仲村が罵りながら春日の衣服を剥がしていく姿は圧巻で、苛立ちが前面にあふれ出たシーンでした。

ここでの春日は未だ自身の内なる感情を吐き出すことなく、中学生らしい「逃げ」を見せてくれます。
本に自身の悪意の全てが詰まっているいう考えがまさにそうですね。

第二・第三の試練に関しては、中学生が最も興味を持つであろうセクシャルな部分に触れていきます。

春日の中で佐伯さんはどこまでも清らかで繊細なミューズであり、映画冒頭のシーンでも性的な目で見ることを嫌っています。

佐伯自身も春日のどこかミステリアスだが優しい部分に惚れ込んでいるようで、2人の初々しさに胸が高鳴った方も多いのではないでしょうか。

ここに仲村佐和という爆弾がトッピングされることで物語の棘となる部分ができていると考えます。
しかし、仲村佐和の視点でこの作品を考えると、彼女もまたピュアな人間ではないでしょうか?

成長期の自身の体の変化と心の変化に対応することが出来ず、周りの変化にもついていけない侘しさを悪態や奇行で晴らしているように見えます。
もし誰か理解者がいれば、誰かと寄り添うことができていたら仲村佐和という人物の世界は変わっていたかもしれませんね。

佐伯さんもどこか大人っぽく憧れの存在ではあるのですが、初めて触れた黒い感情に戸惑う姿は精神の成長の過程ではまだまだ子供であることが見て取れます。

教室で奇行にはしる春日と仲村のシーンは激しい音楽に合わせて演出されています。
ここでの行動は奇行というだけではなく、自身の心の中に湧き上がる気持ちのやり場のない葛藤が描かれていると感じます。

黒い墨汁はストレスや鬱屈した感情の表れであり、この空間でのみ味わえる高揚感と開放感をダンスで表現しているように見えます。

雨の山でのシーンは春日・仲村・佐伯の3人の心の涙が表現されています。

・仲村の中に自分の存在を見出した春日

・春日を理解できない全てを受け入れたい佐伯

・自分の信じた感情に揺らぎを覚える春日を疎む仲村

それぞれにやりきれない気持ちがあり、ぶつけ合う姿は形が違えど経験のある人もいるのではないでしょうか。

館長もその1人です。

映画を観ると多くの感情が沸き上がってきますが、今作は特に昔の自分に見てほしいなと感じる作品です。

さて前編はここまでとしましょう!

後編では3人目のヒロインである常盤が登場します!

思いの入り乱れる後編をぜひお楽しみにー!

たかひ館長
たかひ館長
それじゃ!また!
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